アラーム疲労?不必要なアラームを減らすには?

研究

こんにちわ~、看ゴローです!
論文が一段落ついたので久々の更新です。
気づいたらもう夏終わってた…
このままコロナも収束するといいんですが~

今日も論文紹介です!

論文紹介

みなさんはAlarm Fatigueって知っていますか?

Alram Fatigueとは直訳すると警報音疲労ですが、よくわからないですよね。

実は看護師などの医療従事者が、モニターのアラームやナースコールに気づかなかったり、気づいても反応が鈍くなったりすることを指します。
アラーム疲労なんて呼ばれたりもします。

特に集中治療室では頻繁にどこかしこからアラームが鳴っており、一般的にこのアラーム疲労が発生すると言われています。
ICUや急性期病棟で勤務する看護師さんは経験があるのではないでしょうか?
患者さんのバイタルサインの警告アラームを見逃してしまったら患者さんは危ないですよね。

そこで今回はこの論文!
Seifert M, Tola DH, Thompson J, McGugan L, Smallheer B. Effect of bundle set interventions on physiologic alarms and alarm fatigue in an intensive care unit: A quality improvement project [published online ahead of print, 2021 Aug 12]. Intensive Crit Care Nurs. 2021;103098. doi:10.1016/j.iccn.2021.103098
「ICUにおける生理学的アラームとアラーム疲労に対するバンドルによる介入効果:質改善プロジェクト」です!

プロジェクトの意義と目的

アラームやノイズに継続的にさらされるとアラーム疲労の原因となり、看護師は音に対して鈍感になります。
米国のFDA(食品医薬品局)は2005年から2008年の間にモニタリング機器のアラームに関連した患者の死亡報告を数百件確認しています。
そのため看護師のアラーム疲労を軽減するための取り組みが患者安全のために不可欠です。

しかしアラームの85%~99%が介入を必要としないと言われています。
ほとんどのアラームは「行動をおこさない」や「無関係」、「誤報」なのです。
こういったアラームを減らすことで、本当に重要なアラームに即座に気づける可能性はありますよね。

このプロジェクトの目的は、問題のあるアラームの総数を60%削減するためのバンドルを実施し、看護師のアラーム疲労を50%減少させることでした。また看護師のバンドル遵守率も測定しました。

方法はどのように?

介入

バンドルというのは、介入を別々におこなうよりも一緒におこなうことで良い効果をもたらす3~5つの根拠に基づく介入セット、つまり「アベノミクス3本の矢」みたいなものです。

介入方法はまず過去6週間のアラームデータを調査し、

  1. アラーム発生率
  2. アラームの種類
  3. アラーム発生頻度

のベースラインのデータを得ました。
その結果、問題となるアラーム発生数の多かった上位3種類のアラームは、不整脈非侵襲的血圧呼吸でした。

その後、米国クリティカルケア看護師協会(AACN)の「Alarm Management」の推奨事項に基づいて、以下のアラーム管理バンドルが開発されました。

  1. 心電図電極を毎日交換
  2. 心電図電極を装着する皮膚を石鹸と水で適切に下地処理
  3. アラームパラメータを患者に合わせて調整

これを6週間実施し、さきほどの発生率、種類、頻度のデータを取得して前後で比較しました。

教育

バンドル実施の2週間前に、教育モジュールを作成してすべてのICU看護師にオンラインで配布しました。
教育モジュールは、アラーム疲労とその患者安全への影響、バンドルの内容についてでした。
また、モジュールを紹介するポスターを作成し、質改善プロジェクトの期間中、看護師の休憩室に掲示しました。

アラームパラメータの変更はすべてICUに所属する上級医が支持することになっていたため、患者のバイタルサインに合わせてアラームを調整するための教育用ハンドアウトをメールで送付しました。

また、心電図電極の適切な貼付部位について患者のベッド頭上に提示しました。

看護師のアラーム疲労質問表

アラーム疲労を測定するために、Torabizadehらの Nurses’Alarm Fatigue Questionnaireを看護師に配布しました。

この尺度は5段階のリッカート尺度で13項目で構成されています。
スコアは8~44点で、高いほどアラーム疲労の度合いが大きいいことを示しています。

データ収集

アラームデータは病院の情報技術部門を通じて入手しました。

バンドル遵守率を評価するために、バンドルチェックリストを作成しました。
アラームパラメータの変更、心電図電極の交換、皮膚の準備、心電図電極の日付記入に関する項目が含まれていました。

アラーム疲労質問表はバンドル実施前後でオンライン調査ツールを用いて配布しました。

結果はどうだったのか?

バンドル実施前後のアラーム減少

実施前40445件 → 実施後33322

表1 問題となる生理学的アラームの上位3位

なんと不整脈のアラームが47%も減少しています。

表1 実施前と実施後のアラーム

バンドルの遵守率

表2 バンドル介入の遵守率

Yesに注目!
準備も心電図交換もアラーム変更も全て93%以上で、ほぼ遵守されていますね。
これはなかなか高い値ですね。

看護師のアラーム疲労

表3 介入前後の看護師のアラーム疲労質問紙の平均値

これはアラーム疲労質問紙のスコアです。
合計値は表には書いていませんが、文章では
実施前30.59±5.56 → 実施後32.60±4.84
と書いてありました。
検定の結果、統計的有意差はなかったようです(p=0.166)。

結論

バンドル介入により3つの生理学的モニターアラームの総数を減少させることができましたがICU看護師のAlarm Fatigueの軽減にはつながりませんでした

私見

僕がAlarm Fatigueを知って最初に思ったのは狼少年です。
確かに臨床現場では「嘘つき」アラームが多すぎて、本当にやばいアラームがなったときの対応が遅れるなんてこともあるのではないでしょうか。
これもある意味、人間の適応能力なのかもしれませんね。

私見ですが、アラームの発生件数と頻度についてですが、これには患者の数が考慮されていなかったのが気になるところです。
例えばバンドル実施後に患者の人数が少なかったのならアラームの数も少なくなるのは必然ですよね。
なので患者の数を母数として、患者1人あたりのアラーム回数を算出した方が良かったのではないかと思いました。

しかし毎日心電図交換はもったいない気がしますね。
安い電極ならいけるのか?コスト面が心配です。
皮膚には良さそう。

遵守率はちょっと高すぎる気もしますがどうなんでしょう。
戦闘力のある人ならこのあたりのゴリ押しは行けるのかもしれないですね。
それかICUのスタッフ全体が減らすぞ!って一体になってやる気になればこのくらいいけるのかもしれません。

あと表2って書いてあるけどこれ図やろ…
著者も編集者もしっかりせい…

以上本日の論文紹介でした!

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