看護師に対するアンガーマネジメントプログラムの効果

研究

何かと責任を持つ場面の多い看護師、常に一定以上の緊張感を持ちながら仕事をしている人も多いはず。
思うように仕事が回らなかったり、チームメンバーが自分の思うように動いてくれなかったり、前勤務者がテキトーすぎて引き継いだ自分の業務量が増えたりとイライラすることもあるでしょう。

そんな方のために前回は看護師のためのアンガーマネジメントという記事で、アンガーマネジメントの方法やコツを紹介しました!
気になる方は下のリンクからどうぞ!

看護師のためのアンガーマネジメント
この記事では看護師のためのアンガーマネジメントについて解説します。 アンガーマネジメントができるようになれば、職場でのイラつきを抑えることも上手に怒ることもできるようになるのでご覧ください。

今回はそのアンガーマネジメントを看護師に教育した研究を紹介します!

研究紹介

Yun K, Yoo YS. Effects of the Anger Management Program for Nurses [published online ahead of print, 2021 Aug 2]. Asian Nurs Res (Korean Soc Nurs Sci). 2021;S1976-1317(21)00050-5.

論文のタイトルは「Effect of the Anger Management Program for Nurses」
「看護師のためのアンガーマネジメントプログラムの効果」です!

この研究の背景

怒りをコントロールできずあらわにしたり、抑制したりすると、人間関係に問題を引き起こし、職務満足度や組織全体のパフォーマンスを低下させる可能性があります。

これは当然看護師にも当てはまります。この怒りが解決されないと、怒りは伝播しケアの質を低下させることがわかっています。
ストレスの多い環境では、不安や怒りなどの負の感情をコントロールすることが難しくなり、ウェルビーイングも低下するため、看護師が怒りや仕事のストレスを効果的に管理できるようにすることが重要です。

先行研究では看護師へのアンガーマネジメントプログラムの適用により心理的回復力や職務満足度の向上が見られています。
今回はアンガーマネジメントの教育と実践を組み合わせて勤務中の怒りのコーピングスキルの向上に焦点を当てました。

最近では心拍変動が自律神経系の活動やバランスを評価できると言われており、怒りも心拍変動で評価されています。
この研究の目的はアンガーマネジメントプログラムが看護師の怒り、仕事上のストレス、ウェルビーイング、心拍変動に及ぼす影響を評価することでした。

方法はどのように?

研究デザイン

研究デザインは前後比較試験で、韓国ソウルの2つの病院に1年以上勤務した看護師を対象としました。
なんと参加者には報酬100ドル支払われたようです!

参加者の人数は計算したところ必要なのが20人だったようで、各グループ24人ずつ割り当てられました。

参加者のフローチャート

途中で実験群では4人辞退し、対照群では試験後に参加しなかったため1人辞退し、最終的には実験群20人、対照群23人となりました

赤で囲ったところに注目です。
参加者の特性に有意な差はありませんでした。

測定項目は、怒りの程度・種類・表現仕事上のストレス心理的ウェルビーイング心拍変動でした。
それらの測定には次のツールとアンケートを使いました。

怒り

怒りの程度は0から10までの直線で評価するVASを使いました。

怒りの種類はSpielbergerが開発したStat-trait Anger Expression Inventory (STAXI)を改良したSTAXI-KIVというツールを使用しました。
これは怒りの状態と特性について評価する質問紙で20項目で構成されており、それぞれ1(全くない)~4(いつもある)までのリッカートスケールで評価します。

怒りの表現はChonが開発したツールを使用しました。
この質問紙は20項目で、抑圧、表現、偽装、怒りのコントロールという4つのサブドメインで構成されています。
各項目は1(全くない)~4(ほとんど常にある)の4段階のリッカートスケールで評価します。
各サブドメインの平均点で怒りの表現を評価しました。

仕事上のストレス

仕事上のストレスはFrenchらによって開発されたExpanded Nursing Stress Scaleを用いて測定しました。
「死と瀕死」「医師との対立」「感情的準備の不足」「同僚との関係の問題」「上司との関係の問題」「仕事の負担の多さ」「治療に関する不確実性」「患者とその家族」「差別」の9つの要因を測定できます。
各項目は0(経験無し)、1(全くストレスを感じない)~4(常にストレスを感じる)の3段階で評価されます。点数が高いほど仕事のストレスが高いことを示します。

心理的ウェルビーイング

心理的ウェルビーイングにはKimらが修正したPsychological Wellbeing Scaleを使用しました。
これは46項目で自己受容、環境の熟達、他者との肯定的な関係、自律性、人生の目的、自己成長の6つの要素を、1(全くない)~5(非常にある)の5段階で測定します。
得点が高いほど心理的ウェルビーイングが高いことを示します。

心拍変動

心拍変動は光ファイバーセンサーを介して脈はを分析する脈波計を用いて測定しました。
まず参加者には椅子にゆったりと座ってもらい、約10分間の測定を行いました。

  1. トータルパワー:ストレスがあると低下
  2. 高周波数(HF):副交感神経の活動の指標、ストレスを経験すると低下
  3. 低周波数(LF):副交感神経と交感神経の両方の活動の指標
  4. LF/HF:自律神経系の全体的なバランス

以上の項目について測定しました。

アンガーマネジメントプログラム

プログラムはBeckの認知行動療法モデルを基にしました。
先行研究をレビューし、グループフォーカスインタビューや需要調査などもおこなってプログラムは開発されました(下図)。

アンガーマネジメントプログラム

少人数で1時間のセッションを週1回、8週間にわたって実施しました。
例えば2回目のセッションでは認知変容をテーマとし、自己理解や怒りの理解について学びました。
具体的には自分のプロフィールの書き出しや、怒りの定義や公式についてレクチャーを受けたりです。
7回目のセッションでは認知行動変容と感情の制御を実践するというテーマで、怒りを感じる状況を成長の機会と捉えるようにすることや、許すことや感謝の手紙を書いたり、自分のアンガーマネジメントマニュアルを書いて共有したりしました。
その他にもアロマオイルを使ったネックレスを作って、怒りを感じる場面でネックレスの香りを嗅いで怒りを制御したり、音楽やお茶を飲みながら瞑想の練習をしたりとさまざまな怒りへのコーピングについて学びました。

データ収集

S病院を実験群としてプログラム介入し、Y病院を対照群として何も介入しませんでした。
プログラム前、プログラム終了直後、プログラム終了4週間後にアンケート調査と、心拍変動の測定をしました。

結果はどうだったのか?

アンガーマネジメントプログラムの効果

仕事上の怒りの程度への効果

実験群:プログラム前7.25→プログラム終了直後4.80→4週間後4.80
対照群:プログラム前7.17→プログラム終了直後6.78→4週間後6.30
と実験群で著明な減少(p=0.001)。

スコアが高いと怒りの程度が高いので、つまり仕事上の怒りの程度はプログラムで減少しました

仕事上のストレスへの効果

実験群:プログラム前3.47→プログラム終了直後3.23→4週間後3.11
対照群:プログラム前3.57→プログラム終了直後3.54→4週間後3.56
と実験群で減少(p=0.022)。

スコアが高いとストレスが高いので、つまり仕事上のストレスはプログラムで減少しました

心理的ウェルビーイングへの効果

実験群:プログラム前3.43→プログラム終了直後3.57→4週間後3.61
対照群:プログラム前3.40→プログラム終了直後3.40→4週間後3.38
実験群で有意に上昇(p=0.016)。

スコアが高いとウェルビーイングが高いので、つまりプログラムで心理的ウェルビーイングが高まりました

心拍変動への効果

アンガーマネジメントの心拍変動への効果

プログラム前と終了直後のトータルパワーの変化率
実験群:3.09%↑
対照群:1.79%↓
p=0.028

プログラム終了直後と4週間後のトータルパワーの変化率
実験群:2.14%↓
対照群:3.48%↑
p=0.012

プログラム前と終了直後のHF(高周波数)の変化率
実験群:5.37%↑
対照群:3.70%↓
p=0.010

ストレスがあるとトータルパワーとHFは低下します。
なので、プログラム直後では両者とも上昇しているのでバイタルサイン的にもプログラムの効果があったと言えます。

結論

韓国の臨床看護師を対象としたアンガーマネジメントプログラムは、怒りや仕事上のストレスを効果的に軽減し、心理的ウェルビーイングを向上させました。さらに、このプログラムは心拍変動に関しても安定した効果を示しました

私見

アンガーマネジメント素晴らしいですね!
怒りや仕事上のストレスだけでなく心理的ウェルビーイングまでも向上させるなんてすごい!
かなり濃い内容のプログラムですし、身につけたら人生が少し豊かになりそうな気がしました~

それにアンガーマネジメントの講習受けて1万円もらえるんだったらやるよなぁ…
というかよくそんなお金あるなぁ…20人だけでも20万以上必要ですもんね。

あと心拍変動ですけど、これって何か怒りのあったイベント直後とかじゃないと意味なさそうですよね。
何もないときにやってもその日のバイタルサイン次第だと思うし…
でもそういう測定方法もあるんだという新しい発見にもなりました!

こういう認知行動療法の介入研究は長くて大変そうだけど、やりきったときは達成感もあるでしょうね。
以上看護師に対するアンガーマネジメントプログラムの効果でした!

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