高齢者の服薬遵守には医師とのコミュニケーションが欠かせない!

研究

梅雨明けして暑くなってきましたね~
みなさん熱中症に注意して水分補給をしっかりとしていきましょう!

それでは今日も論文を紹介していきます!

研究紹介

今回紹介する研究はこちら!舞台は日本!

Ueno, H., Ishikawa, H., Kato, M., Okuhara, T., Okada, H., Kiuchi, T. Factors related to self-care drug treatment and medication adherence of elderly people in Japan. Public Health in Practice, Volume 2, November 2021

和訳すると「日本の高齢者のセルフケアの薬物治療と服薬遵守に関連する要因」です。
Twitterでフォローしている「はむ」さんが「患者さんが服薬中断する要因」という内容で記事を書いていたので、自分も興味が湧き論文ベースで調べてみました!
はむさんの記事は精神科の領域です。リンクしておきますので気になる方はどうぞ!

患者さんが服薬中断する要因
こんにちはー意識低い看護師のはむですさて、看護師の皆さん【患者さんの服薬中断への介入】について悩んだことは無いですか?それこそ精神科の患者さんなどは自分で服薬中断して再入院となるケースは非常に多いですよねそんで我々精神科に関わる病棟・外来・

自分が紹介する論文は高齢者を対象にした論文です。
病院でもなかなか内服をしてくれない患者さんっていますよね。
果たしてどのようにアプローチしていくのがいいのでしょうか?

研究の意義と目的

総務省HP http://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html

日本は高齢化が進んでおり、2018年の内閣府の発表によると2017年の65歳以上の人口は3515万人と過去最高で、人口の28%が65歳以上の高齢者となっています。
この表よりもさらに右側の2065年には38%(2.6人に1人)が高齢者になることが予想されています。

さらに糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患の患者も増加しており、薬物療法が重要な役割を果たしています。
しかし、先進国の慢性疾患患者の服薬遵守率はなんと50%に留まっているんです…

適切な服薬でセルフケアすることによって病状の安定や進行防止、副作用を防ぐことなどが可能となりますが、その実態は明らかではありません。
さらには高齢者は認知症や加齢による身体変化によってセルフケアが困難になる可能性があります。

そこでこの研究では在宅高齢者の服薬セルフケアの実態と服薬遵守に何が関連するのかを明らかにすることが目的でした。

研究はどのように?

調査方法

対象は日本の65歳以上の在宅高齢者で、継続的な服薬管理が必要な慢性疾患を持つ人でした。
そして自宅にFAXがあり、FAXで質問表を送受信できる人という条件でした。目標は500人。

実際の調査方法は大手の調査会社が全国の登録モニターから対象者にFAXでアンケートを送って、そのアンケートが返送されるというものでした。

情報が10%以上欠落している、薬を服薬していない人、調査時に入院している人は除外されました。

何を測定したのか?

測定したのは「特性」「医師とのコミュニケーション」「服薬遵守」「ヘルスリテラシー」の4つでした。

対象者の特性

性別、年齢、教育水準、同居の有無、医療費の負担状況、ライフスタイル、健康状態、薬剤の副作用、服薬の数、診断名を聴取しました。

医師とのコミュニケーション

医師とのコミュニケーションを評価するためにClaymanらが開発した尺度「Ask, Understand, Remember Assessment (AURA)」を使いました。
AURAは医療情報の収集、理解、記憶、評価に関する自己効力感を測定する4つの項目で作られています。
自己効力感というのは「自分は必要な行動をとって、結果を出せると考えられる力」、簡単に言うと「自分にはできる!と思うこと」です。
AURAは「少しそう思う」「とてもそう思う」「あまりそう思わない」「とてもそう思わない」の4段階で評価し、得点が高いほどコミュニケーションに関する自己効力感が高いことを示していました。

服薬遵守

服薬遵守は、上野らが開発した慢性疾患患者を対象とした服薬遵守尺度の12項目版を使いました。
この尺度は「服薬コンプライアンス」「医療従事者との連携」「服薬に関する情報へのアクセスと利用の意欲」「薬を飲むことを受け入れ、それがどのように患者のライフスタイルに合っているか」の4つの項目で構成されていました。
1「全くない」~5「常にある」の5段階で評価されて、スコアが高いほど服薬遵守が高いことを意味していました。

ヘルスリテラシー

ヘルスリテラシーは石川らが開発してヘルスリテラシー尺度を使いました。
リテラシーとは知識やそれを活用する能力のことを言います。
この尺度は機能的ヘルスリテラシー、伝達的ヘルスリテラシー、批判的ヘルスリテラシーの3つの項目で構成されています。

  • 機能的ヘルスリテラシー:基本的な読み書き能力
  • 伝達的ヘルスリテラシー:情報を入手、伝達、適用する能力
  • 批判的ヘルスリテラシー:情報を批判的に吟味する能力

これらを4段階で評価し、点数が高いほどヘルスリテラシーが高いことを示していました。

 

結果はどうだったのか?

アンケート調査

表1 対象者の特性

表1に示したのは500人の慢性疾患を持つ在宅高齢者の特性です。
男女比はほぼ1:1、平均年齢は74歳、教育レベルは高卒かそれ以下が53%で大卒かそれ以上が44%、誰かと同居しているのは93%、ライフスタイルを悪い以上感じている人は62%、医療費の負担を時々かそれ以上感じている人は46%でした。
薬に関しては副作用があったのは11%、6つ以上薬を飲んでいたのは21%でした。

医師とのコミュニケーションは4~16点中13点
服薬遵守は12~60点中46
ヘルスリテラシーは3~12点中8点 でした。

服薬遵守には何が関係しているのか?

表3 服薬遵守尺度との相関関係

そして服薬遵守には一体何が関係していたのか?
表3を見ていただくとーーー

  • 機能的へルスリテラシー
  • 伝達的ヘルスリテラシー
  • 医師とのコミュニケーション

この3つの尺度が相関しており、それぞれの点数が高いほど服薬遵守の点数も高かったです。
つまりは「読み書き能力が高いほど服薬遵守し、情報を入手/伝達/適用する能力が高いほど服薬遵守し、医師とのコミュニケーションに関する自己効力感が高いほど服薬遵守する」という結果でした。

これ以上は長くなるので、ここではトータルスコアについての説明のみで割愛しますが、他にも服薬遵守の下位尺度と相関している項目もいくつかありますので、気になる方は表の太字を見てみてください!
わからない方はお気軽にご連絡を!!

私見

この研究から言えることとして、医療者が服薬遵守を高めるために介入できる方法は、医者と患者が強い信頼関係でつながりよくコミュニケーションを取ることです。
この研究では医師とのコミュニケーションしか調べていないので、残念ながら看護師との関係については何も言えません。
でも医師で大丈夫なら看護師でも服薬遵守するようになるかもしれませんよね。
ヘルスリテラシーも相関していますが、正直ヘルスリテラシーはその人自身の特性によるところが大きそうなので手っ取り早い方法としてはコミュニケーションですね。

そしてツッコミどころもいくつかありました。
まず方法についてですが、FAXを使える人限定っていうところが引っかかりますよね。
FAXを未だに使用している国は日本くらい、なんて報道も以前あった気がします。
しかし高齢者世代はFAXを使い慣れていそうではありますね。そういう点では高齢者の研究としては適しているかもしれません。
まぁそれでもFAXない人もいるでしょうし、郵送などの方法も合わせて使う必要はあったかなと思います。

自分たちの世代が高齢者になったら、調査はもっと楽になりますかね。
今既にWeb調査も流行っていますし、メールが基本になってくるかもしれませんね。

次に、医師とのコミュニケーション評価尺度のAURAを翻訳したと書いてありましたが、その具体的な方法についてはあまり明記されていません。
さらには妥当性や信頼性(本当に的を射た尺度になっているか)についても不明です。
さらにはこのアンケート結果は対象者たちの主観的な評価でしかありません。この点は解釈に注意が必要です。

そして、そもそもこういうアンケートをちゃんと返信するような人って服薬遵守もしっかりしてそうですよね
実際500人の服薬遵守の点数は46/60点で80%以上の点数になっていました。果たして日本全国の高齢者が平均でそんな高得点を取れるでしょうか。
しかしながらこのあたりがこの研究の限界かもしれませんね。

なかなか興味深い論文でした!
今度は精神科領域の自己中断についても見てみたいですね!


研究
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