【ER看護師必見】看護師のトリアージのミスには何が影響する?

研究
こんにちわ、ゴローです!本日も最新の論文を紹介していきます!

研究紹介

今回は救急看護師のトリアージがテーマです。みなさんも上図のようなタグは見たことがあるのではないでしょうか?医療ドラマでもよく見かけますよね。
トリアージとは救急診療を受ける患者の優先順位をつけることで、重症となり得る患者を見定めて早期に治療を受けさせることができます。トリアージ看護師がその重要な役割を担っているんです。

ですが、トリアージをおこなうのは飽くまで人間です。オーバートリアージ(過大評価)でそこまで早期の治療が必要ない人に人員を集中的に使ったり、アンダートリアージ(過小評価)で重症となり得る人の治療を遅らせてしまう可能性がある訳です。
つまりトリアージの精度(正確性)が臨床での鍵になるわけですが、今までそれについて調査した研究はほとんどありませんでした。

そこで今回はこの論文!
Ausserhofer D, Zaboli A, Pfeifer N, et al. Errors in nurse-led triage: An observational study [published online ahead of print, 2020 Oct 8]. Int J Nurs Stud. 2020;113:103788.
「看護師主導のトリアージにおけるミス:観察研究」

目的

①イタリアの救急科での看護師トリアージ(Manchester Triage System)のミスの頻度
②トリアージミスと患者アウトカム(救急科の滞在時間、院内死亡率)との関連性
③患者、救急科の環境、看護師などトリアージミスには何が関連するのか

PECOにすると、
P:救急診療にきた患者
E:トリアージミスのあった患者
C:トリアージミスのなかった患者
O:患者の転帰

方法

1929人のカルテの記載内容を調査した。
看護師2人(トリアージ経験2年以上)が患者のカルテを独自に再評価して結果を比較し、結果が異なる場合は3人目の看護師(トリアージ経験10年以上)が再評価した。

結果

トリアージミスと患者アウトカム

Our analyses revealed that patients with triage errors had significantly longer emergency department stays (median: 161 min, Q1-Q3: 115–243 min) than those correctly triaged (median: 148 min; Q1-Q3: 96–217 min; U = 228,334.5, z=−2.77, p = 0.005). Moreover, those with triage errors (24.5%, n = 77) were significantly more often hospitalized compared to those without (16%, n = 259; p<0.001). Of our random sample of 1929 patients, 11 (0.6%) died within 1 week and 25 (1.3%) within 30 days after their emergency department access and triage. We observed no statistically significant differences between patients with and without triage errors for either 7-day (0.3% vs 0.6%, p = 1.000) or 30-day mortality (1.0% vs. 1.4%, p = 0.786).
トリアージミスのあった患者は入院時間が13分長かった。
トリアージミスのあった患者はより多く入院した。
7日後と30日後の死亡率に関しては有意差はなかった。

トリアージミスに何が関連するのか

表1 患者、トリアージ看護師、救急部の環境の特性

トリアージミスは16.3%の患者(1929人中314人)で起こっていた。
患者の特徴:患者の年齢が高い、高血圧か、虚血性心疾患か、ガンか、慢性疾患であるか、慢性疾患が2つ以上あるか、重症であるか(オレンジ色または赤色)
救急科の環境:トリアージされた患者の数が多い、15分ごとに1人以上トリアージがされた数が多い
トリアージ看護師の特徴:年齢が高い、Manchester Triage System以外のトリアージシステムの経験があった、他の救急科での経験がない、5年以上急性期で働いている

単変量解析ではトリアージミスする群では上記の要因があるっていうことですね。
看護師の特徴で、経験年数が長いほどトリアージミスをするっていうのは問題になりそうですね…
慣れているからトリアージプロセスをちゃんとおこなわないとか…??

表2 トリアージミスに関連する要因の多変量解析

単変量解析で有意差があった項目を多変量解析して、交絡因子を排除するわけです。例えば、死亡率には年齢と重症度が関連しているけど、年齢が高ければ重症度は上がるから一概に年齢と重症度の両方が死亡率に関連しているとは言えない、ってことです。
結果としては患者の年齢が高い、慢性疾患がある、重症度が高い、15分ごとに1人以上トリアージをした、Manchester Triage System以外のトリアージシステムの経験があった、これらの要因がトリアージミスに関連している、というわけですね。

ただなぜか、
“As Table 2 shows, multivariate analyses revealed that when > one patient was triaged every 15 min (OR: 2.112;95%CI: 1.331–3.354), older patients (OR: 1.009; 95%CI: 1.003–1.015) with > than two chronic conditions (OR: 1.506; 95%CI: 1.091–2.081) and orange or red priority codes (OR: 1.314; 95%CI: 1.046–1.651) whose triage nurse had previous experience with another triage system (OR: 3.189; 95%CI: 2.455–4.14) had higher odds of triage errors.”
と表2と文章で書いてある数値が違うのが気になります…ただの間違い?

私見

しかしながら6人に1人の割合でトリアージミスをしてしまう、これはまぁまぁ高い数値な気がしますよね。
特に高齢であったり、慢性疾患があったりすることが正確な判断を鈍らせる、ということなのでしょうか?
救急看護師として気をつけなければいけないのは、そういった患者特性(特に慢性疾患が2つ以上ある)に惑わされずにトリアージの本来のプロセスに従って機械的におこなう、ということでしょうか。
環境要因として忙しい時はやはりミスをするのはどの領域でも同じですね。そういうときこそ冷静に判断する技量を身につけられたら良いですが、なかなか難しそうですね。
AI(人工知能)が導入されれば、機械的に冷静に判断できますからこれらの課題も解決しそうです。

研究
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